ハンムラビ wikipedia|無料辞書
◆ 名前の語源
ハンムラビの名は出土する
楔形文字の文書にの5字、あるいは稀にの4字のつづりで表記されている。
楔形文字はもともと
シュメール語を表記するための文字であるため、
セム語派の言語を表記すると音素の区別が不十分になる問題が生じる。文書の地の文は東方セム語の
アッカド語で記されており、この語ではセム語派独特の音素の消失がある程度起きているほか、楔形文字による表記の歴史が長いため、表記法が工夫されている。しかし、ハンムラビは同じセム語派でも楔形文字の表記の歴史が浅い西方セム語のアムル語を用いるアムル人である。アムル人のアムル語人名は楔形文字では不十分にしか表記されておらず、語義の解釈の障害となる。
名の構成に関しては、「はである」という解釈で研究者の意見が一致しているが、音素が不完全にしか再現できないため、との意味の解釈で見解が分かれている。
前半のに関しては、共通セム語で「義理の父」を意味する
とする説と
アラビア語などで「父方のおじ」を意味する
とする説があるが、
マリ文書でもハンムラビはと表記されており、なおかつこの文書群の楔形文字では
が、
がと表記されていることから、を後者で解釈し、
と読むのが妥当とされる。また、アムル人の人名に組み込まれた神名には
親族語彙で呼ばれるものがよくあることが知られているため、前半に関しては「(父方の)おじさん(と呼ばれる神)」であるとされる。
後半のに関しては、
と読んで「偉大である」とする説と、
と読んで「治療者」とする説がある。前者は楔形文字に
の音を表記する文字があるのにハンムラビの名の表記に用いている例がないこととアララク文書でハンムラビの名の表記に
を意味する表意文字が用いられている例があることを根拠としており、後者は
と
の書き分けが可能な
ウガリト文字で書かれた
ウガリト文書に記された王名に
または
と表記されたものがあり、これがハンムラビと同名の他人であるとする説を根拠としている。
以上から、ハンムラビの名の発音と意味の解釈は、
・ と読んで「(父方の)おじさん(と呼ばれる神)は偉大である」と解釈する
・ と読んで「(父方の)おじさん(と呼ばれる神)は治療者である」と解釈する
2説が代表的なものとなっている。
◆ 略歴
ハンムラビは
都市国家バビロンに樹立された
バビロン第一王朝の第6代目の王であった。当初は
イシン、
ラルサ、
マリといった当時メソポタミアに覇を競った大国間に挟まれた弱小国の王であったが、次第に頭角を現してメソポタミア地方を統一し、
シュメール及び
アッカドの地の王の地位を獲得した。都市国家バビロンがシュメール及びアッカドの地を統一したことにより、この地域はバビロニアとも呼ばれるようになった。ハンムラビはこの領域国家として統一されたバビロニア王国最初の王となり、死ぬまで王として統治した。その治世は、
紀元前1792年から死の年である
紀元前1750年まで、あるいは年代測定法の違いにより紀元前1728年から紀元前1686年までにわたる。
ハンムラビは当初、南方の諸都市を征服してバビロンを拡張し、後に
メソポタミアのほとんどの地域を征服するに至った。
学者の中には、ハンムラビと『
旧約聖書』の『
創世記』に登場するバビロンの王ニムロデを結びつけるものもいる。ハンムラビの名は「偉大なるハム」とも解釈可能である。ニムロデは
ノアの三男、
ハムの孫にあたり、
バベルの塔の建設者とされる。
◆ ハンムラビ法
ハンムラビは『
ハンムラビ法典』と呼ばれる
法典によって都市文明を確立したことで有名である。『ハンムラビ法典』は被害者や加害者の身分によって刑罰に違いを付け、身体刑を多く科すため、現代の視点からは残酷であると見られる。しかし成文法を作るだけでなく、法を体系化しようとしたことは、文明の発達にとって重要な一歩であるとみなされる。『
聖書』にある「目には目を、歯には歯を」という言葉は『ハンムラビ法典』に遡ることができ、同害復讐法体系との関連が指摘されている。ハンムラビはこのほかにも、
灌漑手段改良への援助を行うなど、バビロンの改良に努めた。
◆ 参照
・ Arnold, Bill T. (2005). Who Were the Babylonians? Brill Academic Publishers. ISBN 90-04-13071-3
・ Breasted, James Henry (2003). Ancient Time or a History of the Early World, Part 1. Kessinger Publishing. ISBN 0-7661-4946-3
・ DeBlois, Lukas (1997). An Introduction to the Ancient World. Routledge Publishing. ISBN 0-415-12773-4
・